(4)顧客価値の「創造」に向けて
“前項で顧客価値の“増大”について実例をまじえて説明しましたが、この項では顧客価値の“創造”について考えてみたいと思います。
“顧客価値”とは、お客様から見たときには、企業が提供する商品やサービスの価値ということになります。
そして、企業が提供する商品やサービスの価値を“創造する”というのは、下記のようなことが考えられます。
・サービス開発 既存の商品やサービスの価値を、より多くのお客様に気付いていただく
・ソリューション開発 既存の商品やサービスの新たな活用方法を創り出す
・ブランディング開発 商品やサービスをご利用いただく事でお客様のブランド力を創り出す
一方で、企業側から見た場合の“顧客価値”とは、ひとりひとりのお客様の価値ということになります。
ひとりひとりのお客様の価値を“創造する”というのは、前項までで解説した“ロイヤルティ・プログラム”を運営することです。
・クロスセル お客様に他の商品やサービスも買ってもらう
従来は、お客様がますますそのお店のファンになるという理論の“One to Oneマーケティング”として、“囲い込み”手法が実践されてきました。お店に、あるひとりの熱心なファンのお客様がいらっしゃるとして(たぶんどんなお店でもこういう方がいらっしゃることでしょう)、そのお客様にVIPカードをお渡ししたり、貯めていただいたマイレージ数やポイント数に応じて、スペシャルな特典をお贈りするといった手法です。
ところが、近年ではスマートフォンとSNSの普及により、従来からある顧客価値増大のプログラムに留まらず、“新たに価値を創りだす”プログラムも必要となってきました。お客様はそのお店や商品・サービスが好きであればあるほど、SNSを通じて“人に伝えたい”=“シェアしたい”という願望を強くもつようになってきています。例えば“お気に入りの商品の写真を撮ってInstagram(写真を中心としたSNS)にアップ”というような、“シェアしたい”という思考を、顧客価値の創造プログラムに活かすのです。
SNSを通じてシェアしていただけるような優良顧客の“友達”は、優良顧客になる可能性が非常に高いです。いわゆる“類は友を呼ぶ”という現象で、人の集団は同じ趣味を持っていたり、同じ職種であったり、似た者同士で形成されていくのが自然なことだからです。たとえ異業種交流会に参加したとしても、そこには“異業種交流会が好きな人達”が集まっているのが現実です。
したがって、これからの時代は、一人の優良顧客を獲得したとすれば、そのお客様だけでなく“お客様の友達”まで視野に入れて、いかにたくさんの“似た者同士”のお客様を獲得していくかという施策が非常に重要になってくるでしょう。
昔からある手法に“紹介制度”というものがあります。お友達を紹介してくれたら商品券やポイントなどの特典がもらえるという制度です。最近では、紹介者の心理的なハードルをさげるために、紹介される側の人にも特典を付与する形式が盛んになってきています。
この講座でたびたびご紹介している“いきなり!ステーキ”では、“肉マイレージカードをお友達に紹介したら合計1,000円プレゼント”というキャンペーンを実施中です。(2017年2月6日現在)
・肉マイレージ会員様紹介システム お友達紹介キャンペーン(外部リンク)
まず、“肉マイレージカード”をお持ちの会員の方が、紹介制度にエントリーすると紹介メールが届きます。そのメールを紹介したい友だちに転送します。紹介された人が紹介メールを店頭で掲示して“肉マイレージカード”を作ると、紹介した人と、紹介された人それぞれに500円ずつチャージされるという仕組みです。
SNSの非常にオープンなプラットフォームで拡散していただく場合も同様に、紹介する方もされる方も共に特典がある形式の方が拡散しやすいものと思われます。
TwitterやFacebookなどで紹介制度を実施する場合、10人お友達を持っている人が紹介制度の特典内容を投稿するときと、1,000人以上お友達を持っている人が投稿するときの顧客価値は単純に100倍とはいかないとは思いますが、相当な価値の差があると思われます。できるだけ、多くのお友達とつながっている“インフルエンサー”と呼ばれる人に投稿してもらえるような工夫も必要となって来ています。
このSNS現象のわかりやすい事例としては、2016年の後半に流行した“ピコ太郎”さんの動画があります。ペン・パイナッポー…のあのYoutube動画ですが、ツイッターで8千万人のフォロワーを持つ米国で人気の歌手“ジャスティン・ビーバー”さんが紹介したことがきっかけで世界的な大ヒットとなりました。
このようなSNSでの現象を企業の広報・宣伝活動に置き換えると、そこにSNSや動画を活用した“コンテンツマーケティング”の世界が広がって行きます。これからの時代は、このコンテンツマーケティングとスマートCRMの連携が大きなテーマとなっていくのではないでしょうか。
これについては、また別の機会に解説していきたいと思います。