

1996年創業の株式会社ワールド・ワンは、『土佐清水ワールド』をはじめ、郷土料理をテーマとした店舗を神戸・東京・大阪を中心に30店舗を構える。「郷土と、ともに。」をビジョンに掲げ、顧客・生産者・従業員の”三方よし”を実現する幅広い事業を展開している企業だ。
ビートレンド スマートフォンアプリの採用を決定し、2020年の”コロナ禍”にアプリをリリース。多様な制約の中で、いかにデジタルシフトを推進し、アプリを会員サービスに活用してきたのか。取締役・営業本部長 鄭氏と企画開発部 田内氏に詳しいお話を伺った。

取締役・営業本部長 鄭氏

企画開発部 田内氏
郷土料理に軸足を置いた多角的ビジネス
ドミナント戦略により、飽和市場の中でもユニークな立場を確立

コロナ禍の逆境をむしろ好機と捉え、
会員サービスのデジタルシフトを推進
それまでのロイヤリティマーケティング手段といえば、プラスチックのポイントカードとDMが中心だったが、ポイントカードは「10名様のグループの中に3人の会員がいても、会計に紐づけられるのが一人分だけ」という仕様が悩ましく、DMは月々のコストが課題となっていた。
社内的にも「時代はアプリである」という機運が高まっており、いよいよデジタル化を決定、そのパートナーとしてビートレンドを選定いただいた。

押す挙動も楽しい電子スタンプ
積年の課題が解消される機能に加え、選定の大きな決め手となったのは、他社に比べて「手頃な価格」と「独自のデータベースが持てる自由度の高さ」だったという。後々導入することになるスマレジ・ebicaとの連携など、拡張性の大きさもメリットだった、と鄭氏は振り返る。
しかし、アプリの開発が進行する中、世界的な新型コロナウイルスの感染が拡大。2020年春には緊急事態宣言により営業時間や内容が制限されるなど、飲食業界にとっても非常に大きな打撃となったことは記憶に新しい。プロジェクトの延期や休止は検討されなかったのだろうか。
「当社はあまりネガティブには捉えていなくて、むしろ、こういう時だからこそアプリが必要だよね、という考え方でした。DMに関しても、新しい形(アプリ)の模索がなければ、やめる決断はできなかったと思うんです。むしろコロナ禍がデジタルシフトのきっかけになったようなものです。」(鄭氏)
ポイントシステムのデジタル化により会員数は3倍に
取得データで顧客像を可視化、ロイヤルカスタマーの醸成に活用
アプリ導入後、最初に行ったことは、会員数を伸ばすことに主眼を置いた、大々的なアプリインストールキャンペーンだった。「アプリをインストールしたら500ポイント進呈」と、インパクトのある内容だ。結果、アプリ会員数は約3倍に、累計15万人を超えた。
また、アプリ導入によりユーザー動向のデータが取得できるようになり、次の打ち手を模索するための分析材料として活用できるようになった。特に来店履歴は、購買金額では判らない顧客のロイヤリティを可視化できる重要なファクターとして需要が高まっており、ポイントやクーポンなどによる顧客還元の新たな基準として利用されているという。

アプリトップ画面とポイントカード画面
またワールド・ワン社が展開する全ての業態でポイントシステムが導入されているため、1業態だけのリピーターから、業態横断での利用促進に寄与している。業態ごとの商品単価の違いによるサービス作りの難しさはありつつも、オリジナルグッズなどでカバーできているため、”ワールド・ワンのお店”全体のファンの醸成にもつながっている印象だ。
ポイント機能を使った「ファーストスタンプ」で販促スキルを可視化
成功事例の横展開で店舗間のスキルギャップを解消
「店舗の接客スキル可視化のため『ファーストスタンプ』施策を実施しました。最初のスタンプを押した店舗に紐づけて、付与ポイント数を月次ランキング化しました。」(鄭氏)

日々のデータ分析が アクションに繋がっている
『ファーストスタンプ』の得点は、顧客対応の積極性を示す指標となり、店舗間で顕著な差が見られた。「そこで、プッシュ通知を使った集客に成功している店舗の配信内容を『雛形』として社内SNSで共有しました。アプリプッシュの即効性を実感したスタッフが、次第に自主的に文言や写真まで工夫するようになり、各店舗の販促スキルが<爆上がり>しました。」(田内氏)
各店舗に集客ノウハウを浸透させた後も、「モチベーションを維持してもらうため、日々、社内SNSでランキングを投稿しています。年2回の賞金付きキャンペーンでメリハリをつけながら、ランキングに変化があった店舗への声掛けも行って士気を高めています。」(田内氏)
アンケート機能を店舗評価に活用しながら、
リピーター層拡大のための応用方法を模索
このように既存顧客の意見を反映した評価システムが機能する一方で、アプリ会員からのみ意見を収集している点で、来店者全体の意見として捉えるには限界があるのも事実だ。
実際、業態の異なる『あら、りんご。』などの場合、回答者層が著しく偏るため、別のアンケートフォームを用意し、QRコードから誘導している。業態横断のアンケートシステム特有の運用上の課題も浮き彫りになっており、鄭氏は「こういった部分のチューニングが可能になると、様々な展開が期待できる」と述べている。
ファンの高齢化も徐々に進む中、コア層に新規層を取り込み、拡大させることは急務だ。そのためには、非会員のインサイトを探ったり、覆面調査を実施するなど、新たな視点からの取り組みも必要になるだろう。
現状、非会員向けのアンケートはフリーウェアなどで準備可能だが、それをマーケティングに活用するには情報の紐付けが課題となる。フリーウェアではこの紐付けが困難だ。
様々なデータ連携を得意とするビートレンドが、現在、CX(顧客体験)領域の強化に取り組んでいる背景を踏まえ、企画面での協力にも期待を寄せているというコメントをいただいた。
顧客コミュニケーションは次のステージへ
単なる(会員数・売上などの)”数”を指標とするのではなく、どのくらい会社の魅力や郷土の魅力の発信につなげられているか、という部分に重きを置いたとき、顧客とのファーストコミュニケーションはどのような形であるべきかを模索しているという。
その中で、今後はアプリを「単なる接客ツールではなく、郷土コミュニティを広げ、顧客と地域の課題解決につなげる取り組みを実現するツール」とし、企画面での活用を強化したい考えだ。
「コミュニティに参加して人の輪を広げることも、当社の大事な使命なので、来店回数や利用金額だけでは測れない、”郷土文化への関与度”を測る新しい指標として”KDA(※郷土を熱くの略)”というものの導入を検討しています。」(鄭氏)

田内氏デザインの公式キャラ『ワールドにゃん』はKDAのアンバサダー



