

株式会社フォレストファームが展開する、関西最大級の農産物直売所『旬の駅』は、採れたての新鮮な農産物や地域のこだわり商品を豊富に取り揃え、生産者とお客様をつなぐ場として地域のファンに愛されています。店舗数は10店舗まで拡大する一方で、主力販促ツールの折込チラシの費用は年間1,000万円にも上り、最もお知らせしたい最新の入荷情報をタイムリーに届けられない点が長年の課題でした。
チラシ依存からの脱却と顧客管理の一元化を目指し、2022年に『betrend』の導入を決断。シニア層のお客様が多くアプリ化の壁に直面しながらも、現場のパートスタッフを巻き込んだ独自の運用体制を確立し、年間来店数1割(約20万人)増とチラシ費用の大幅削減を達成しました。導入の裏にあった葛藤や現場主導の運用ノウハウについて、取締役の神田氏と京都店店長の前島氏に話を伺いました。

取締役 マネージャー 神田氏

京都店店長 前島氏
課題
・年間約1,000万円の折込チラシ費用に対し、反応率はわずか3%で費用対効果の検証が困難
・毎朝入荷する「今一番届けたい旬の野菜」情報を、即座に伝えられないタイムラグ
・店舗ごとに分断した顧客データと、シニア層へのアプリ浸透に対する社内の不安
導入効果
・年間販促費を半減以下に圧縮(一部店舗はチラシ代ゼロ化でも過去最高の集客・売上を記録)
・開店2時間前のプッシュ通知で、行列が売り場中央まで届く規模に倍増。生産者への感謝メッセージも10倍超(月50〜60件)に増加
・アプリ会員12.2万人超を獲得し、全店の年間来店数は約1割(約20万人)増加
タイムリーに伝わらないもどかしさと、
膨らむ販促コスト
神田氏:以前は、イベント毎に5万部もの折込チラシを打っていました。コストにして年間約1,000万円です。でも、それを見て来店されるお客様は、わずか3%程度(約1,500人)なんです。それなのに、来店してくださったその1,000人から2,000人のお客様には、お得な情報や旬のセールの情報がタイムリーに伝わっていない。この状況が実に勿体なく、もどかしく感じていました。

当時の課題感について語る神田氏。
折込チラシは1週間前には印刷所に入稿しなければならないので、配布当日の入荷商品をタイムリーに知らせる術はありません。地域誌や新聞の折込チラシのような「間接的な広告」ではなく、今来てくださっているお客様へ、タイムリーに、ダイレクトに、情報を発信できる手段の獲得は、切実な課題でした。

現場での取り組みについて語る前島氏。
betrend+既存POSシステムとの連携が
ファン化を促進すると確信
神田氏:当社の全店舗で稼働している東芝テック様の顧客情報システム『CSdelight』と連携できる会員証アプリという点で「betrend一択」でした。チラシではなしえなかった、鮮度感やライブ感のある通知ができるのはもとより、クーポン機能をはじめ、『CSdelight』側で判定した会員ランクのアプリ表示や、これまで紙で運用していたサンキューメッセージの電子化など、お客様をファンにするための仕組みを作れることも、大きな後押しになりました。

多彩な商品が並ぶ店内。平日の昼間にもかかわらず、多くのお客様で活気に満ちていた。
現場のパートスタッフを巻き込んだ
「泥臭い運用」が生んだ劇的な成果
前島氏:正直、最初はとても大変でした(笑)。当社のお客様は本当にシニア層が多いので「LINE以外のアプリを入れたことがない」「GoogleアカウントやApple IDのパスワードが分からない」という方も少なくありませんでしたから。
神田氏:当然のことですが、アプリ会員証の告知ポスターを貼れば、お客様が自主的に登録してくださる、なんて都合良くはいかないんです。ですから、最初の3ヶ月間は、専用ブースを設け、スタッフが1対1でお客様のスマホ操作をサポートして、手取り足取りご案内しました。

店内に常設されたアプリ専用ブースと、買い物カゴに取り付けられた案内POP。
神田氏:全店舗から社員とパートさんが集まる、月1回の「アプリ会議」をスタートさせました。私たちの会社は正社員が1割で、残り9割がパートさんです。現場でお客様に一番近いパートさんを巻き込まないと、絶対にうまくいかないと認識していました。
アプリ会議では「今年度の目標は会員数13万人!達成したらみんなで豪華ランチに行こう!」と目標を共有し、成功体験を全店でストックしていきました。毎朝の朝礼でも前日の売上や来客数とあわせて前日のアプリ登録者数を発表するなど、常に意識が高まるような声かけもしています。
今ではアプリ内のバナー画像から手描きPOPの制作、15分に1回流れる店内アナウンスの録音まで、ほぼ全てをパートさんたちが中心となって進めてくれています。
前島氏:例えば、「桃のゲリラ販売」ですが、アプリのプッシュ通知の即効性には驚かされましたね。開店2時間前に「本日〇時から桃を販売します!」とプッシュ通知を送信したところ、開店時にはすでに30人ほどの大行列ができていたんです。
また、ナスの入荷が多すぎて棚から溢れそうになったときには「2袋以上買ったらポイントプレゼント」と銘打ってアプリ会員限定の「生産者応援クーポン」を発行したところ、ナスを買う予定でなかったお客様にもそのことが伝わり、見事に売り捌くことができました。
アプリのおかげで、お客様は得をし、生産者さんは商品完売、お店の売上は上がる。まさに「三方良し」の循環を作ることができました。
神田氏:数値としての成果も明確です。アプリ会員数は12万2,000人を超え、導入1年目で全店の来店数が約1割(年間で約20万人)増加しました。コスト面でも大きなインパクトがありました。イベント毎に印刷していたチラシですが、京都店最大のイベントの『周年祭』の折込チラシをやめ、アプリ配信のみにしたところ、チラシを出した前年よりも来店数・売上ともに上回るという嬉しい結果になりました。
浮いたチラシの予算をイベント費用に回し、じゃんけん大会の景品を豪華にしてアプリで告知したことも、集客の大きな要因となりました。おかげで年間1,000万円ほど計上していた広告費は全体で半減し、店舗によってはほぼゼロにまで削減できています。
一方通行から「循環型」へ。
生産者とお客様をつなぐハブとしての未来感
神田氏:これまでのアプリ運用は、店舗からお客様への一方通行の情報発信が中心でしたが、今後は、アプリを通じてお客様と生産者さんとお店がもっと自由に、深くつながる「循環型コミュニケーション」を育てていきたいと考えています。
前島氏:すでに大きな手応えを感じているのですが、『サンキューメッセージ』のさらなる広がりには期待を寄せています。『サンキューメッセージ』は、「〇〇さんのイチゴが甘くて美味しかった!」というような、お客様から生産者へ向けたファンレターのようなもので、以前は店内に紙の投函箱を置いていたのですが、アプリから簡単に送信できるように改修したところ、届くメッセージの数が10倍以上になりました。

店内に飾られた手書きの「サンキューメッセージ」と「旬の駅」に出荷している生産者の紹介コーナー。アプリ経由を含め、毎月50〜60件ほどのメッセージが届く。
神田氏:お客様参加型イベントをアプリ内で開催するなど、今後もさらに買い物が楽しくなるような企画をどんどん仕掛けていきたいですね。『旬の駅』を、単なる野菜の販売の場ではなく、来るたびに人のぬくもりが感じられるテーマパークのような場所にしていきたいと思っています。



