組合の想いを『betrend』でシステム化――
資生堂労働組合のモバイルサイトで美容職の分身『ウニコ』が躍動する
日本を代表する化粧品メーカー、資生堂。その労働組合では、“会社の情報”や“組合の情報・想い”をオンラインに伝えるためのパートナーとして、ビートレンドを起用。資生堂の美容職向けモバイルサイト『ウニコサイト』を、『betrend』ベースで構築・運用しているほか、組合の新ホームページ『1万人ねっと』の構築でもビートレンドの全面的な協力を仰いだ。果たして、それによって組合の「想い」はどのようにシステム化され、組合員のためになっているのだろうか。当事者に伺う。
美容職の孤独感と疎外感を払拭する
「会社を辞めようと考えていたけど、もう一度頑張ってみます。
相談に乗ってくれてありがとう」――。
『ウニコサイト』に相談を寄せてきた資生堂のある美容職は、そんな感謝の言葉を資生堂労働組合中央執行委員の澤田氏に伝えてきたという。
澤田氏は、資生堂の美容職から組合本部(専従)の役員になり、『ウニコサイト』の企画・運営を一手に担うことになった人物である。『ウニコサイト』を通じて、“美容職に知ってほしい会社・組合の情報”を月一回の頻度で更新・提供しているほか、『ウニコサイト』の“相談機能”を通じて寄せられてくる相談事にも対応している。
「そんな中で、美容職たちから『相談に乗ってもらって、気持ちが楽になった』、『一人じゃないことが分かってホッとした』といった言葉をもらうと、ウニコサイトをやっていて本当に良かったと感じます。」と、澤田氏は言う。
資生堂の労働組合員・約1万2,000名のうち、約8,000名は美容職で占められている。資生堂の美容職は、“ビューティ・コンサルタント(BC)”と呼ばれ、会社の看板を背負いながら、店頭での接客、美容アドバイスに当たっている。そんな重責を背負いながらも、「普段の仕事上の悩みについて相談をする相手が少ないのが実情」(澤田氏)という。というのも、美容職は、全国各所の小売店舗(専門店、百貨店やドラッグストアなど)で活動しており、一般のオフィスワーカーのように、常に多くの同僚や上司がそばにいるわけではないからだ。
「美容職は一人で思い悩んでしまうことが少なくないですし、職場と自宅との往復を重ねる中で、会社や同僚たち、そして組合もどこか遠い存在に感じてしまうんです。加えて、本社勤務・研究所勤務の人に比べて、会社の情報がタイムリーに入ってこない。私が、『ウニコサイト』の運営をしていく上で、そうした課題を解決・解消し、美容職たちの孤独感・疎外感を払拭したいとの想いがありました。」(澤田氏)。
テクノロジーを超越したサービス
『ウニコサイト』では現在、就業ルールを含む様々な会社情報や組合情報、上述した相談機能のほか、組合員(美容職)のコミュニティ活動『ウニコクラブ』や美容職向けセミナーの案内・募集・活動報告などを提供・展開している。
そんな『ウニコサイト』がスタートを切ったのは2008年のこと。その前身は、紙ベースの美容職向け組合機関誌で、この情報誌のメインキャラクターとして生まれたのが『ウニコ』だった。『ウニコ』は、美容職の分身とも言える愛くるしいキャラクターで、マンガ風の誌面の中で会社や組合の情報を学びながら、その内容をわかりやすく読者(美容職)に伝えていく。その情報発信のスタイルが美容職の間で好評を博し、“会社の情報をどこで知りえたか”といった美容職に対するリサーチにおいて、組合の機関誌が最上位にランクされるようになっていた。
「とりわけ紙ベースのメディアでは、読者の知りたい情報が知りたいときに得られないという難点がありますし、情報発信が“片方向”。組合員の意見や相談ごとをオンデマンドで受け付けたり、組合員との双方向のコミュニケーションを充実したり、組合員が自ら情報を発信できるような仕組みを作り上げたりすることは不可能です。ですから、美容職が最も頻繁に使うであろうICT機器を活用したのです。」と、資生堂労働組合中央執行委員長の赤塚氏は振り返る。
この構想の下、組合では、『betrend』を『ウニコサイト』実現のためのサービスとして選定した。理由は、「自分たちでモバイル・コンテンツを作り、自ら発信したいという我々のニーズにピタリと合致したから」(赤塚氏)という。つまり、モバイルサイトの構築・運用のしやすさが、『betrend』採用の大きな理由だったわけだ。
もっとも、のちに『ウニコサイト』の運営を引き継いだ澤田氏にとっては、『ウニコサイト』の扱いは極めて難解だったようだ。
「正直、『ウニコサイト』を引き受けるまで、私はITに関してまったくの素人で、できればPCにすら触れたくないタイプの人間でした。ですから、『ウニコサイト』の扱い方も当初はまったく分からず、本当に大変で泣きたいぐらいでしたね。」と、澤田氏は笑う。それでも、澤田氏には、美容職のために「サイトをこうしたい」「こう変えたい」という想いも強くあり、結局は、『ウニコサイト』のリニューアルに取り組んだ。ビートレンドは、そうした澤田氏の想いを受けとめ、包括的な技術支援を提供した。その貢献度の大きさを、澤田氏はこう評価する。
「ビートレンドの担当の方には、いくら感謝しても足りないほどです。私の意図や想いをすべて汲み取りながら、システムの随所に手を入れていただきましたし、こちらの要望が膨らみ、予算内で実現が難しくなったときも、さまざまな工夫を凝らし、こちらの意図どおりのモノを予算内で作ってくれたのです。技術だけではなく、技術を超えた人としての対応のすばらしさが、ビートレンドさんのサービスにはあると痛感しました。」(澤田氏)。
こうして、『ウニコサイト』は2014年4月にリニューアル版がオープンした。この改定版では、認証・登録ページの使い勝手が増したほか、コンテンツ閲覧のしやすさも大幅にアップしている。
従業員の幸せが、100年の発展に通じる
『ウニコサイト』を通じたビートレンドに対する信頼は、資生堂労働組合の新ホームページ『1万人ねっと』の構築でのCRM部分での『betrend』の採用にもつながった。
この新サイトで組合が目指した目的の1つは、コンテンツの見やすさだ。同サイト構築を担当した、資生堂労働組合中央執行委員の柚木氏は言う。
「今、資生堂は大きな変革のときを迎え、組合員も、会社がどの方向に向かっているのか、変革の中で組合が何を考え、何をしようとしているかを知りたいと望んでいます。ですから、組合としても、ホームページを通じて組合員が知りたい情報をすぐに入手でき、会社・組合に対する安心感や期待感が得られるようにしなければならないと考えました。」
柚木氏によれば、従来の組合サイトは多数のコンテンツが複雑に入り組み、「どの情報が大切なのか」が分かりにくく、また、編集する側が自らコンテンツをアップしにくい状況にあったという。
そこで、誰でも簡単に目的の情報にたどり着け、コンテンツの更新も鮮度よく容易に行えるようなサイト作りを目指した。
「これまでのウニコサイトの構築・運用で良い関係性が築け、事前にしっかりコンセプトが握れた結果、我々のイメージしたとおりのサイトを2~3か月という短期間で完成させることができました。」続けて、赤塚氏は言う。
「資生堂のような大きな組織が変わろうとしているとき、組合員たちは、『会社の変化についていけないのではないか』、『会社と自分たちの将来はどうなるか』といった不安を抱くものです。組合は、そんな従業員の疑念・不安をいち早く解消し、組合員が仲間意識を持ちながら、会社と自分の変革に率先して取り組めるような環境を作っていかなければなりません。だからこそ、スピーディな情報の発信・共有が不可欠で、それを支えてくれたビートレンドには非常に感謝しています」
さらに、赤塚氏はこうも指摘し、話を締めくくる。
「ビートレンドと我々とのつながりは、究極的には人と人との信頼関係で成り立っていると言えますが、それは、会社も組合も同じです、結局は、人と人のつながりですべての物事が回っていきます。ですから、社員が自分の会社や自社の製品、そしてお客様に愛情を持てなければ、そして社員が幸せになれなければ、この先100年の会社の発展はありえません。その意味でも、資生堂には、いつまでも人にあたたかい会社として、社会的な価値を維持してほしい。当然、組合も人への思いやりを大切に考え、人や社会から必要とされる存在でありたいと考えています。」