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震災後のくまモンの役割 〜ソーシャルコミュニケーターとしてのキャラクター活用〜

震災後のくまモンの役割 〜ソーシャルコミュニケーターとしてのキャラクター活用〜

2016年4月28日

株式会社アサツー ディ・ケイ
キャラクター総研 リーダー
野澤 智行

4月14日、熊本・大分を震源とする大地震が発生しました。お亡くなりになられた方々とご遺族の皆さまにご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された多くの方たちに謹んでお見舞い申し上げます。一日も早い復旧、復興をお祈り致します。

今回は、日本でトップ人気のご当地キャラ“くまモン”を巡る、地震発生後から現在に至る話題を取り上げることで、キャラクターが担える役割について考察します。

1.くまモン誕生の経緯とこれまでの軌跡
くまモンは、九州新幹線全線開通に向けて熊本県出身・小山薫堂さんの提案で発足した“くまもとサプライズ”プロジェクトの最中、グッドデザインカンパニー水野学さんの落書きがきっかけとなって2010年に誕生した、熊本県の公式キャラクターです。同年秋、くまもとサプライズ特命全権大使として大阪で名刺を一万枚配布するPR活動の途中で失踪、蒲島知事が緊急記者会見を開くなど、SNS拡散を狙ったネタが話題になり、その存在が知られていきました。

熊本県内だけでなく福岡、大阪、東京での積極的な活動が実を結んで、2011年に“ゆるキャラ(R)グランプリ”で優勝。利用許諾申請が受諾されれば無料で使えるロイヤリティフリー戦略を取ったことで、大量の土産物やグッズが販売され、一大ブームを形成していきます。積極的なコラボ商品展開を国内外で推進して、2011年11月から2年間の経済効果は1244億円にも達しています。(日本銀行熊本支店試算)

2014年11月には、前年展開した“赤いほっぺ紛失事件キャンペーン”で、優れた口コミキャンペーンに送られる“WOMMYアワード”の銅賞を受賞するなど、そのPR手法には定評があります。

【参考】くまモン ほっぺ紛失事件キャンペーン
http://www.dentsu-pr.co.jp/ourwork/case0046.html

2.熊本地震発生で沈黙するくまモン
47万人のフォロワーに向けて、営業部長兼しあわせ部長としてTwitter公式アカウント(@55_kumamon)で熊本の魅力を毎日発信し続けていたくまモンですが、4月14日の熊本地震発生後は更新がストップしています。

各地のご当地キャラやファンたちが安否を気遣うツイートを書き込む中、翌4月15日にくまモン公式サイトで、被災した県民を最優先に行動するためSNSでの情報発信を控えているとの発表がありました。47万人に発信できるツールの緊急時対応については意見が分かれるかもしれませんが、続く4月19日には、熊本地震支援の募金活動やイベント実施時に、くまモンイラストの周囲に“c2010熊本県くまモン#熊本支援”と記載することで許諾不要とする特例措置も発表されています。

くまモンオフィシャルホームページ“SNSでの情報発信について”
http://kumamon-official.jp/information#106879

3.“#くまモン頑張れ絵”で広がるムーブメント
4月16日、著名な漫画家同士のネットワークを起点に、地震後の支援に向けた興味深い試みが始まりました。『あしたのジョー』や『おれは鉄平』などで知られるちばてつやさんが、自身のブログに森田拳次さん(『丸出だめ夫』など)から届いたくまモン応援イラストを掲載し、応援の気持ちをマンガで伝えたいと呼びかけたところ、森川ジョージさん(『はじめの一歩』など)が、くまモンを描いて励まそうと提案したのが最初のきっかけです。

すぐにハッシュタグ“#くまモン頑張れ絵”がついて、尾田栄一郎さん(『ONE PIECE』、熊本県出身)や諫山創さん(『進撃の巨人』、大分県出身)などの漫画家たちやアニメーター、グッドデザインカンパニー水野学さんなどのデザイナー・イラストレーター、ご当地キャラ仲間たち、芸能人・有名人、そして国内外の心ある人たちによる多種多様なくまモンイラストが描かれ、瞬く間にSNSで拡散していきました。

現地の方たちの邪魔をすることなく、応援の気持ちをさりげなく伝える点で優れた企画ですし、自然発生的に善意の輪が広がっていく様子には、目を瞠るものがあります。

ちばてつや ぐずてつ日記“クマモンが・・・”

森川ジョージTwitter

■togetter“#くまモン頑張れ絵”に届けられたイラストたち

■くまモン頑張れ絵 ハッシュタグ Twitter

4.“ソーシャルコミュニケーター”としてのくまモンの可能性
コミュニケーション目的に応じて、キャラクターの役割は以下の三段階に変化します。

まず、キャラクターを使うことで、広告・広報の認知が向上し、店頭で商品が選ばれやすくなる“アテンションゲッター”という役割です。たとえばタイムラインで膨大な書込みが流れがちなSNSで目を止めてもらうのに、キャラクターの静止画や動画は効果を発揮します。

次の段階が“ナビゲーター”です。今は商品のコモディティ化が進んで差別化が困難ですが、そんな商品や企業活動に対する理解を促進して、安心感・信頼感を与え、商品選択につなげるナビゲーション機能を、キャラクターが担うことができます。

三段階目の機能として注目されているのが、“ソーシャルコミュニケーター”という役割です。環境保護や弱者支援、災害復興など、一般生活者を巻き込んで、一緒に進めていかなければ成り立たないような社会的意義の強い活動を広める際に、コミュニケーションを円滑にしたり、幅広い層の共感や参加意識を高めることを期待して、キャラクターが活用されるようになってきています。

どんなにすばらしい社会的活動も、生身の人間が言い出すと、どうしても“売名行為”や“商売に利用している”という穿った見方もされがちですが、キャラクターが呼びかけることで、意外と素直に受け止めてくれるようになるのです。

今回も、くまモンという熊本県民からも県外のファンからも愛され、困っている人に寄り添える優しさと強さを併せ持つ印象のキャラクターがあったからこそ、短期間で災害後の復興の渦中にある人々や支援する人々の心をひとつにまとめる役割を果たせた訳です。

小山薫堂さんの提唱で、募金活動“FOR KUMAMOTO PROJECT”が4月25日からYahoo!Japanで始まり、ハッシュタグ“#くまモンあのね”と、水野学さんによる新ビジュアルも用意されました。くまモンの“ソーシャルコミュニケーター”としての本領が発揮されるのはこれから、今後の活動に期待します。

■Yahoo!Japan “FOR KUMAMOTO PROJECT”
http://cl.am.md/?99YP_8_u684984469_cd5ab

【プロフィール】
野澤 智行 (のざわ ともゆき)
株式会社アサツー ディ・ケイ コンテンツ本部 コンテンツ戦略室
兼 第1アクティベーション・プランニング本部 キャラクター総研 リーダー
デジタルハリウッド大学大学院 客員教授(キャラクターマネジメント論)

千葉大学卒。(株)ビデオリサーチでマーケティングリサーチ全般・営業・企画などを担当した後、(株)旭通信社(現・アサツー ディ・ケイ)に入社、研究開発部門やプランニング部門で、キャラクター開発・活用、イベント・キャンペーン実施、効果測定・分析などを担当。

2013年、日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」の実行委員として企画立案からキャンペーン総指揮を担当。他にもご当地キャラ関連イベントやタイアップ、商品化企画を多数手がける。2005年から、NEC情報ビジネスサイト『Wisdom』で“ビジネスにおけるキャラクター活用”執筆。2014年から『広報会議』 で“キャラクター活用イベント・プロモーションのヒットのツボ”連載。

※文中の商品名、社名等は、各社の商標または登録商標です。


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