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【連載コラム】
井上英昭のひらめきわくわく、スマートCRM講座

第二章 スマートCRMの基礎  -1-

井上英昭のひらめきわくわく、スマートCRM講座

第一章では、スマートCRMという概念や、登場してきた背景について、ITテクノロジーや外部環境の変化に対する対応も含めて解説してきました。第二章では、さらに掘り下げてCRMの本質的な内容について解説していきます。

(1)“顧客”=“個客”

CRMというのは“顧客”との関係性を管理する手法ですが、そもそも“顧客”とは一体誰のことでしょう? 例えば、あなたが、駅前で小さなお菓子屋さん(和菓子も洋菓子もおいてある)をやっているとします。
そこには、アイスキャンディーを買いに来る子供から、重要な接待の際に手土産を持って行こうとするビジネスマン、親戚の法事のお供え物を買いに来られる方など、様々なお客様が来店されます。
毎日のようにお店に足を運ばれるお客様、通りすがりのお客様、お中元やお歳暮の時期だけ大量に購入いただける会社、家族のお誕生日やクリスマスなどのイベントの時だけ買いに来られるお客様、あまり声をかけて欲しくなさそうなお客様、逆にいろいろ話したがるお客様…
たぶん、それぞれのお客様ごとに接客態度、対応することばの表現方法、案内する商品は違うはずです。それが“おもてなし”ということですよね。
このおもてなしも、やはりお店の人それぞれの販売経験や人生経験でまた違ってくるはずです。
もし、あまり販売経験や人生経験のない人がすべてのお客様に画一的で素っ気ない接客をした場合はどうでしょうか?
どんな結果になるかは考えるまでもないですね。

スマートCRMでは、このあたりもやはりスマートにいきたいものです。

そのためには、漠然と“顧客”と捉えるよりも、“個客”と捉えてCRM施策を考えていったほうが良さそうです。

システム的に表現すると

1個客=1ID(識別番号)=1電話番号=1メールアドレス=氏名=住所=XXXX….

と“個客”として識別しておいて、そこに、来店回数、最新来店日、購買金額、ポイント数、アンケート回答などなど横串に紐付けしていきます。
これで、システムは“個客”の行動履歴や購買履歴が管理できるようになります。

(2)ターゲティングとワントゥーワンマーケティング

前項では、顧客を“個客”と考えて施策(おもてなし)を行っていくという表現をしましたが、この項ではマーケティング用語の定義をもう少し明瞭に見ていくことで、より考えを深めていきたいと思います。

まず、“顧客をセグメンテーションする”という考え方があります。セグメンテーションとは、顧客をその類似点や属性等の変数に応じて分類し、市場を細分化してみることを言います。
地域によるセグメンテーション、性別や年齢によるセグメンテーションなど、分類(=セグメント)することで、売りたい商品やサービスをどの市場に向けて、企画や開発や販売を行っていけばよいのかなどを、決めたいときの考え方です。
次に、“顧客をターゲティングする”とは、セグメンテーションした顧客の小集団のうち、どの集団を中心的に攻略していくかを考え、ただ分類するだけではなく、もう少し能動的なアクションをイメージして目標を定めることを言います。

“ターゲティング広告”という言葉を最近よく見聞きしますが、これは、広告の対象となる顧客の属性、行動履歴、購買履歴などを元に、その顧客の興味関心のある広告を掲出する手法です。ただし、あくまで“広告(=広く告げる)”ですから、個人へ向けてアピールしているのではなく、特定の傾向のある人たちに対して適切な内容の広告コンテンツを掲出するというイメージです。

例えば、旅行のサイトや観光地のコンテンツをよく閲覧している人達には、お得な旅行パッケージの広告を配信するといった具合です。

これらに対して、“ワントゥーワン”という場合は、特定の個人に対してアプローチする手法です。
ひとりひとりの購買履歴や購入品目、最新の来店日や趣味趣向などに合わせてアプローチする為には、その人ならではの情報や対応をとる必要があり、顧客データベースが重要となります。
このアプローチについては、これから“RFM分析”などの項でじっくりと解説していきたいと思います。

その前にここでは、効果的な“ターゲティングメール”で売り上げアップを実現した大丸松坂屋百貨店の例をご紹介します。

夏が近づいて来た時期に、毎週配信しているメールマガジン内で“ゆかた”に関するコンテンツを配信しました。何種類かのゆかたのデザインを人気投票の形でクリックを促したところ、WEB投票へのリンクをクリックしたメルマガ会員は2.8%でした。

次に、これをクリックした人のうち(あとで商品を購入したかどうか効果測定が可能な)ハウスカードの保有者で、かつHTMLメールを抵抗なく閲覧できるスマートフォン保有者だけというターゲティング条件に合致する会員約70%に対して、詳しい“ゆかた特集”のコンテンツメールを配信しました。楽しい画像や動画コンテンツを交えて紹介するHTMLメールの形で、ビジュアルにも訴えかけました。その結果、21.2%というかなり高いクリック率が得られました。

のちほど実際にゆかたを購入した人の比率を分析して見ると、まずはメルマガ会員で最初のメールをクリックせず(ゆかた特集メールをみてない段階)に購入した人は0.2%。クリックして人気投票した人(ゆかたの何種類かのデザインを見た人)のうち購入に到った人は1.0%、そして、人気投票をクリックした人に配信したゆかた特集のメール(2回目のメール)をクリックして(そのリンク先コンテンツを閲覧して)購入した人は2.2%と数字が跳ね上がりました。

第二章 スマートCRMの基礎  -1-

このようにターゲティングを繰り返して的確に購買に結びつけていく手法をネット広告業界では“リターゲティング”と呼ばれていますが、それと同じような考え方に基づいた施策となっています。

さすがは老舗の百貨店です。タイミングよくユーザの気持ちを察して効果的に情報提供をするというだけではなく、しっかり成果にも結びつけていて参考になりますね。

(3)自社の“優良顧客”は誰か?

あなたのお店にたくさんのお客様が来店されているとします。でもお客様の人数は多いように見えて、実際の売上金額としては、少数のお得意様や常連さんに支えられているのが現実ではないでしょうか?

長くやっているお店では、どんなお店にもこのような“優良顧客”が存在していますが、お店のスタッフは、全てのお客様へ全員平等に同じサービスをなんとなく提供していることもよくあります。

ところが、慈善事業とは違い、一方では利益追求もしなくてはならない“会社”や“お店”で、平等なサービスがよいかどうか、よく考えてみる必要があります。
よくよく売上の内容を見てみると、約2割のお客様が、約8割の売上を支えているということがよくあります。不思議とそうなることが多いのです。これがいわゆる“ニッパチの法則”ですが、経済において、全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出しているという説である“パレートの法則”と同様の現象です。

少し詳しくお話しすると、例えば、100人のお客様が来店されているお店で、1年間の全売上高を構成するひとりひとりのお客様の売上を大きい順に並べてみると、売上高の大きい上位20人のお客様の売上合計金額が、その他の80人のお客様くらいあるという法則です。売上の8割が上位20人のお客様に支えられていて、残り2割の売上がその他8割のお客様からという現象です。

パレートの法則

そうすると、この“2割の優良顧客”に対して、サービスに関する労力の8割を使う方が理にかなっているということになります。

お店がテレビで紹介されたり、格安クーポンサイトに広告を出すことで一時的に脚光を浴び、それに伴って売上が上がって繁盛しているように見えても、しばらく経つと、閉店に追い込まれてしまうという話を時々聞きます。急激な混雑によって、お得意様がお店に入れなくなったり、接客の質が落ちてしまい、お店に寄りつかなくなってしまったのでしょう。
このようなケースは、8割の長期的な売上に結びつかないお客様と2割のお得意様を平等に扱ったか、むしろ2割のお得意様をないがしろにした結果の不幸な出来事なのだと思います。

テレビで紹介されたり、格安クーポンサイトに出稿したときには、「同時に」2割のお得意様向けにも「さらに強力な特典」や「特別なサービス」を普段以上に提供しなくてはなりません。
新規集客と既存顧客の維持のバランスをとって経営していくことは、どんな会社にとっても尽きないテーマなのではないでしょうか。

ところで、大事にするべき“優良顧客”とはどのように定義すれば良いのでしょうか?

次の項でご紹介しますが、ざっくり定義すると以下のようなお客様が大切にすべきお客様と言えます。

・たくさん買ってくれるお客様
・何回も来店してくれるお客様
・最近来店したお客様
・昔から継続的に買ってくれるお客様

この4つが昔から“優良顧客”のパターンですが、最近では、ソーシャルメディアの急速な発展により、

・友達に紹介してくれるお客様
・写真をキレイに撮影してくれるお客様
・友達の数が多いお客様
・著名なお客様(=発信力があるお客様)

なども、“優良顧客”と定義していいと思います。ただし、これはお店や商品を気に入ってくれた場合であって、逆の場合はネガティブイメージが拡散されてしまうリスクもあるので、諸刃の剣とも言えます。

昔と比べて、お店もサービスに気を抜けないですね。最近では消費者がネット上の格付け比較サイトで勝手に評点を付けてしまいます。しかも一度悪口を書き込まれたら、その書き込みは余程の事情でもない限りはサイトから削除してはもらえないので、永久にお店の汚点として残ってしまいます。いやはやお店にとっては気の毒な時代になってきたものです。

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